・モンテッソーリ教育を子育てに導入したいと思っている
・モンテッソーリ教育の効果について批判的吟味も含めて知りたい
・モンテッソーリ教育のメリット・デメリットについて知りたい
【エビデンスあるの?】モンテッソーリ教育の効果とは?メリット・デメリットを徹底解説
前回の記事では「モンテッソーリ教育って何?」という疑問に対してモンテッソーリ教育の特徴を解説しました。
一言で言うと
親が口出しするのではなく、
「子どもの自主性を引き出す環境を整えたら見守る」
というのがモンテッソーリ教育の概念だったわね!
特徴は分かったけど、実際にどのような効果が期待出来るの?
本記事ではモンテッソーリ教育の効果についてエビデンスをもって解説します。
モンテッソーリ教育の特徴
モンテッソーリ教育の特徴は一言で言うと親は見守る教育です。
詳細はこちらの記事で解説しているので是非ご覧ください。
モンテッソーリ教育による効果
上記のような特徴をもつモンテッソーリ教育ですが、行うことでどのような効果が期待できるのでしょうか。
世間的に言われている効果と、学術的な効果をみていきましょう。
世間で言われているモンテッソーリ教育の効果5選
モンテッソーリ教育の効果①自主性が育まれる
モンテッソーリ教育では、たとえば包丁や針、アイロンであっても、「危ないからダメ」とは言わず、丁寧に扱い方を紹介します。なぜならば、3~6歳の子どもたちは手先を細かく動かしたい欲求をもっているからです。
「欲求を持っている」ことと「自主性」のつながりが分からないんだけどもう少し詳しく説明してもらえない?
子供が「やってみたい」と思うことの中には危険なことも含まれるでしょ?
そして「危険なこと」の範囲も親によって異なるわよね?
親の危険の範囲が広い
⇒なんでも「危ないからダメ」と言われる
⇒自主性が育たない
ってことか!
「危険」というワードを「親の都合」に置き換えても同じことが言えます。
例えば、水を使った動作(手洗い、洗顔、コップに水を注ぐなど)を子どもがやろうとした場合、「部屋が濡れる」などの親の都合で止められるケースもあるかと思います。
モンテッソーリ教育は子どもがやろうとした「ある動作(上の例で言えば水を使った動作)」は子どもの欲求によって惹起された動作としてとらえます。
つまり子どもは水を使いたかったから使ったということです。
欲求がある時に一緒に指導することが、動作の獲得に最も効果がある時ということです。
やりたいと思った時=学習効果最大の時
ということだね!
それは大人にも当てはまることだよね!
このようにモンテッソーリ教育では、全員一斉に指導したり、子どもの発達を無視した指導はしません。
子どもに何かを聞かれたときも、「あなたはどうしたい?」「どうしたらいいと思う?」と子どもに問います。
自分で考え、答えを出すからこそ自主性が育つのです。
モンテッソーリ教育の効果②集中力がアップする
モンテッソーリ教育では、「子どもがやりたいことである『おしごと』に夢中になって没頭する『集中現象』によって、さまざまな能力が伸びる」とされています。
モンテッソーリ教育では、教具を使って作業する時間を「おしごと」と呼んでいます。
モンテッソーリ教育の効果③意欲的になる
国際モンテッソーリ協会認定モンテッソーリ教師であるシモーン・デイヴィス氏は、モンテッソーリ教育における子どもの成長について、次のように述べています。
モンテッソーリ博士は、子ども自身が学びたがり、成長したがっていると大人が信じることが大切だと言っています。子どもは、自分はどう成長すればいいか、そのために何をしなくてはいけないかが本能的にわかっています。
(引用元:シモーン・デイヴィス 著, 宮垣明子 訳(2020), 『おうちモンテッソーリはじめます 「生き抜く力」の伸ばし方』, 永岡書店.)
信じることが大切っていうけど、明確なエビデンスがないものを信じろと言われたら、それは宗教みたいと言われても仕方がないと思うんだけども、、、
子どもの「できない」には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。
たとえば、「手が届かない」「大きすぎて使いこなせない」などです。
モンテッソーリ教育では、踏み台を置いたり、子どもサイズの包丁を用意したりと、そのできない要因を取り除きます。
哲学者のデカルトも「困難は分割せよ」と言っていたし
スポーツ指導の場面でも動作を分割して練習したりするよね!
あれらと同じことか!
そうね!
難しいことは分割して、ハードルを下げることで成功体験を生むことが出来、その結果意欲的になっていると考えられるわね。
実際に成功体験が自己肯定感を高めて意欲を引き出すということは論文レベルでも発表されています。
モンテッソーリ教育の効果④責任感と思いやりの心が生まれる
「好きなことを自由にやる」という面だけがクローズアップされることも多く、「わがままになるのでは」と誤解されることもあるようですが、モンテッソーリ教育では「ルールのなかの自由」が基本となっています。
ルールは、「子どもどうしで尊重しあう」「自分で学ぶ」「まわりを大切にする」という3つです。
また、モンテッソーリ教育は縦割りクラスなので、年齢が上の子どもは、下の子のお手本になるために頑張ります。
モンテッソーリ教育で育った子どもは、自分の役割を見いだすことができるので、思いやりの心と責任感が芽生えていくのです。
モンテッソーリ教育の効果⑤自己肯定感が育まれる
モンテッソーリ教育では、子どもを「独立した市民」ととらえ、“ひとりの人間” として尊重します。
つまり、大人に対して言わないことは子どもに対しても言いません。
大人は子どもたちに、「あなたの気持ちを受け入れますよ」という姿勢で接します。子どもたちは、あるがままに受け入れてもらえる安心感に包まれるので、自己肯定感が育まれるというわけです。
モンテッソーリ教育の学術的なエビデンス
世間でどういわれているのかは分かったよ。
でも、モンテッソーリの良さを聞くと、偉人たちはモンテッソーリ教育を受けてきたという話を聞くよね。
でもそれは従来の教育に比べてモンテッソーリ教育が優れていることの証明にはなっていないよね?
確かにそういう記事やニュースもよくあるけど、あなたの意見も尤もね!
モンテッソーリ教育を受けた著名人
ただ、きちんと学術的な研究もされている部分もあるのよ!
モンテッソーリ教育のエビデンスについては複数の報告がされています。
具体的にはアメリカで2015年に発表された
Academic Achievement Outcomes: A Comparison of Montessori and Non-Montessori Public Elementary School Students(訳:学業成績の成果:モンテッソーリと非モンテッソーリの公立小学校生徒の比較)
という研究があります。論文では
- モンテッソーリ教育を行っている小学校の生徒と従来の教育を行っている小学校の生徒を比較した
- 1~3年生においては学力に有意な差はなかった
- 4年生と5年生では文章読解能力と数学の能力においてモンテッソーリ教育を行っている小学校の生徒の方が優れていた
と報告されています。
モンテッソーリ教育群の方が優れていたんだね!
その理由についてはどのように考察されているの?
なぜこのような結果になったかは論文内では「モンテッソーリ教育を受けている時間が長い」ほど効果に差が出るのではないかと報告されています。
なるほど。
だとすると日本でモンテッソーリ教育を行おうとすると幼稚園までだから、「時間が長いほど効果がある」というのは成立しづらいんじゃない?
それは教育をモンテッソーリ幼稚園に委ねた場合でしょ?
家庭内教育のスタンスをモンテッソーリメソッドを取り入れたものにする分には小学校以降も変わらないと私は思っているわ。
それにモンテッソーリ自身は「長い人生を生きていくために必要な能力の80%は6歳までに身につく」と述べているわ。
その他にもモンテッソーリ教育を行っている小学校の生徒と従来の教育を行っている小学校の生徒を比較した研究は複数報告されています。
対象数は少ないですが、数学の苦手な生徒にモンテッソーリ教育を実施した結果成績が向上した報告もあります。
特に注目なのは、モンテッソーリ教育の効果についてのナラティブレビューです。
このレビューの中では、モンテッソーリ教育は有効かどうか、そしてなぜ有効なのかについて検討されており、
https://click.endnote.com/viewer?doi=10.1038%2Fs41539-017-0012-7&token=WzMzMTEzNzksIjEwLjEwMzgvczQxNTM5LTAxNy0wMDEyLTciXQ.0-cK6AcOpSFkpatsYvN4orarfOU
- teaching early literacy through a phonic approach embedded in a rich language context(幼児期からの早期読み書き教育)
- providing a sensorial foundation for mathematics education(数学教育における感覚的基盤の提供)
- the lack of extrinsic rewards(外発的報酬の欠如)
- the reduced emphasis on academic testing and lack of competition between pupils(学力テストの重視と生徒間の競争の欠如)
- the 3-year age-banding that fosters cross-agetutoring(年齢で区別しない教育)
- the presence of a trained teacher in the early yearsclassroom(モンテッソーリ教育を勉強した先生の存在)
といったモンテッソーリのメソッドの特定の要素が子供の知能向上にたいして有効であるという証拠は、「幅広い教育文献から十分に得られている」とされています。
「モンテッソーリ」という名前ではなく、これらの要素があるからこそ有効ということなんだね!
ただモンテッソーリ教育のエビデンス作りには課題もあります。
結果を比較するためにモンテッソーリ学校と非モンテッソーリ学校にランダムに生徒を割り当てることが必要ですが、現実的にそれを実行することが難しいという研究の限界があります。
多くの研究は、モンテッソーリ校と非モンテッソーリ校の生徒と教師を多くの異なる変数で一致させることに頼っており、その結果、未確認の要因が結果の違いに寄与しているという危険性を伴っています。
交絡因子による影響を否定できないということだね!
仮にランダム化が可能であったとしても、その調査結果が調査した学校だけでなく一般化してもいいのか、モンテッソーリ教育法がどの子どもに最も適しているかなどは、もっと大規模な規模で調査を実施しないと分からないのです。
モンテッソーリ教育のデメリット
世間で言われているモンテッソーリ教育のデメリット3選
モンテッソーリ教育のデメリットと検索すると以下のようなことがまるで本当かのように出てきます。
モンテッソーリ教育のデメリット①集団行動が苦手になる
モンテッソーリ教育では、物事を友達と協力して行うことなどは少ないため、比較的協調性が育ちにくくなると言われることがあります。
また、モンテッソーリ教育では存分に自分の好きなことができる環境が実現されているので、社会に出て行動を制限される環境に身を置かれると自己中心的な行動を起こすのでは?とも言われます。
こんな風に思われてるんだね。
実際のところどうなの?
これは、正反対のイメージね。
むしろ二つのジリツ(自立と自律)ができているから、
- 周りの意見を聞き、それをまとめることが出来る
- さまざまなタイプの友達を持つ人気者が多い
- 生徒会役員や、司会役を積極的に引き受ける
と言われています。
また、モンテッソーリスクールでは縦割りクラスである(3~5歳が同じ教室で活動する)ため、
- 年下の面倒をよくみる
- 困っている人に気づき、適切に説明、援助することが出来る
とも言われています。
モンテッソーリ教育のデメリット②運動が苦手になる
モンテッソーリ教育の教具は屋内で使用するものが多く、屋外で運動する時間が減り、運動不足になる可能性があると言われることがあります。
これもどうなの?
さっき出てきたモンテッソーリ教育を受けた著名人の中にスポーツ選手もいたよね?
それはその人がスポーツの才能があったからだって言う人もいるだろうけど、じゃあ運動が苦手なのもモンテッソーリ教育のせいじゃなくてその人の特性なんじゃないの?
これは夫と同意見ね。
モンテッソーリ教育では、日常生活の練習(「運動の敏感期」に行う運動の練習)の中で手を使ったお仕事も行います。
手指という自分の体を一部を「自分の思い通りに動かす」練習をしていると言われています。
そのため、モンテッソーリ教育を受けた子どもはむしろ体のコントロールが上手いと言われています。
また、教具の使い方を教える時には、『提示』を行います。その際によく見て、真似するという練習を何度も繰り返すことで、先生や指導者の動きを見て、真似することが得意な子が多いと言われています。
確かに運動に限らずだけど、上手な人の真似から入るもんね。
真似が上手な子は運動も上手になりやすいという理屈だね!
モンテッソーリ教育のデメリット③学力テストや競争がないため、学力が劣る
モンテッソーリ教育のメリットでも説明しましたが、モンテッソーリ教育では学力テストを重視しないこと、他社と学力の競争をしないという特徴があります。
その結果非モンテッソーリ教育に比べて学力が劣ると批判されます。
これはさっきエビデンスを提示してくれて否定されているよね!
モンテッソーリ教育のデメリットに学術的なエビデンスはない
モンテッソーリ教育のデメリットとして世間的に言われていることをご紹介しましたが、これらのいずれのデメリットにも明確なエビデンスはありません。
学力に関してはモンテッソーリ教育と非モンテッソーリには差がない、むしろモンテッソーリ教育の方が学力的に優れているという前述のような研究結果も報告されています。
私はモンテッソーリ教育についてたくさん勉強してきたけど、
これらのデメリットは個人のイメージで言われている印象があるわね!
モンテッソーリ教育は誰にでも効果があるとは言い切れない
モンテッソーリ教育を受けたほうが前述のようなメリットがあるならば、なぜもっとメジャーにならないの?
答えは、効果がモンテッソーリ教育によるものと言い切れないからね!
モンテッソーリ教育を選択する親は一般的に社会的地位が高く、社会的地位が高い親は収入も高いと考えられます。
収入が高い人間は優秀な人間と考えるとモンテッソーリ教育を受ける子どもの両親はもともと優秀だという理屈になります。
モンテッソーリ教育を選ぶような親の子供は
遺伝子が優秀なことが多いってことか!
教育の影響ではなく、遺伝子の影響だという可能性を否定できないということだね!
そもそもモンテッソーリ教育を親が選択するような家庭の子供は、もともと優秀な遺伝子を持っており、かつ家庭に資金があるために教育にお金をかけてもらえるから優秀になるという論理です。
子供の学力に及ぼす因子についてはこちらの記事で紹介しています。
まとめ
モンテッソーリ教育の効果や、デメリット・注意点、家庭で取り入れる方法などをご紹介しました。
「教具」や「お仕事」などの専門的なことをしなくても、そのエッセンスを、家庭で少し心がけるだけで意味があると思います。
モンテッソーリ教育は歴史が長く、いろいろな本もたくさん出ています。興味があれば、ぜひ読んでみて下さい。
今回のテーマである、「モンテッソーリ教育の効果」について、参考にした本は以下の三冊です。
『お母さんの工夫』相良敦子・田中昌子
『お母さんの「発見」』相良敦子
『お母さんの「敏感期」』相良敦子
また、子育て世帯の方向けに以下の記事も掲載しています。
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