【非認知能力の土台?】アタッチメントについて8つの論文を用いて解説

この記事はこんな人におすすめ

・子どもの幸せを願っている

・子どもが生まれたが、子育ての方針について悩んでいる

・子どもが生まれたが、今親ができることについて知りたい

目次

【非認知能力の土台】アタッチメントについて8つの論文を用いて解説

以前の記事で、子どもの幸福に関わる要因について解説しました。

幸福度には人間関係が重要だという話だったね!

また、人間関係を構築するには非認知能力が重要とされており、非認知能力についても解説しました。

非認知能力の土台にはアタッチメントが重要だという話だったわね!
この記事では
・アタッチメントとは何?
・アタッチメントを育むにはどうしたらいい?
ということについて解説します!

アタッチメントとは

アタッチメントとはイギリスの精神科医のBowlbyが提唱した概念で、乳幼児と養育者との間に築かれる基本的な信頼感のことを指します。

Attachmentという単語には「小さなものが大きなものにくっつく、付着する」という意味があります。

乳幼児が自分では対処できないような危機的状態に置かれた時、もしくは不安を感じるような状況に置かれたと時、親にひっつく形で自分自身の生存と安全を確保しようとする特徴をAttachmentという単語で表現しています。

Bowlbyは第二次世界大戦における戦争孤児が人間関係や情緒面で不適応をきたす施設病(ホスピタリズム)の研究を通じ、発達の早期に母親からの分離を余儀なくされ、母性的な養育を受けられないことの危険性を提唱しました。

具体的にどういう行動が観察出来たら正常なアタッチメントが形成されていることになるの?

アタッチメント行動の3つのパターン

Bowlbyは、アタッチメント行動のパターンを3つに分けています。

①発信行動 ②定位行動 ③能動的身体接触行動 です。

そして子どもが成長して、内面的なアタッチメントが形成・発達すると、愛着行動は減っていくとしました。

アタッチメントの4つの段階

Bowlbyはアタッチメント行動には段階があることとしています。

それぞれの特徴について、簡単にまとめたのが下の表です。

第1段階

人に反応する
【生まれてから生後12週ごろまで】
発信行動・定位行動が見られる
養育者との区別はしていない
第2段階

親に反応する
【生後12周から6ヶ月ごろまで】
発信行動・定位行動が見られる
特定の人とほかの人を区別する
第3段階

親を求める
【生後6ヶ月から2、3歳ごろまで】
知ってる人。見知らぬ人を区別する
養育者に積極的な愛着行動をとる
養育者を安全基地にして周囲を探索する
第4段階

親から離れる
【3歳以降】
アタッチメントの対象が内在化する
それにより愛着行動が徐々に減少する

このような行動がこのような時期に見られれば正常ということだね!

アタッチメントの4つの型

アメリカの心理学者のAinsworthはBowlbyの愛着理論を踏襲して実験をし、愛着にはいくつかの類型があることを示しました。

有名な実験がストレンジ・シチュエーション法です。

ストレンジ・シチュエーション法とは、乳幼児の愛着行動を測定する実験のことで、乳幼児がいる部屋で、母親・実験者・見知らぬ人が出入りして、その反応を調べます。

この実験から、Aタイプ(回避型)、Bタイプ(安定型)、Cタイプ(アンビバレント型)の3類型が見出されました。

長い間、愛着のタイプはこの3つからとらえられていましたが、近年、この3つのいずれにもあたはまらないDタイプ(無秩序・無方向型)の存在が指摘されています。

スクロールできます
愛着のタイプ特徴
回避型親との分離に抵抗を示さず、一人になっても平気。
親との再会にも強い興味を示さない。
安定型親との分離に抵抗し、一人で過ごすことに寂しさを感じる。
親との再会を強く喜ぶ。
アンビバレント型親から離れることに抵抗を示したかと思えば、一人で過ごし、親との再会に興味を示さない。
無秩序・無方向型一貫した行動がとれず、非常に混乱したアタッチメントが形成されている。
被虐待児に多く、接近と回避を同時的に示す葛藤から不適応に陥る危険が高い。

アタッチメントの概要は分かったわね!
次はその重要性に関するエビデンスを紹介するわね!

アタッチメント関係の形成の重要性

Labor Market Returns to an Early Childhood Stimulation Intervention in Jamaica

2014年に発表されたこの論文は129人の幼児とその親を対象とした実験です。

参加者を下のように4つに分け、どのような親の指導をすると子供に良い影響を与えるのかを調査しました。

その結果、子どもの人生に大きな変化をもたらしたのは栄養の補助ではなく、「もっと子供と遊ぶように」という親への指導でした。

家庭訪問を受けたグループの子どもは、20年後他のグループと比較して収入が25%多かったとされています。

他にも知能指数のテストの成績は良く、攻撃的な行動が少なく、自制ができたとされています。

つまり親が一緒に遊ぶことが大事だったという結論の論文だね!
逆を言えば、親と一緒に過ごせない
もしくは過ごしていても無視される
みたいな環境だと非認知能力は育ちにくいということだね!

もっとアタッチメントに注目した別の論文もあるわ!

The Development of the Person: The Minnesota Study of Risk and Adaptation from Birth to Adulthood

この研究は1970年代にミネソタ大学で始まった長期研究です。

この研究では1歳の時点で親との間に安定したアタッチメントが見られた子供達は、幼稚園では注意深く物事に集中することが出来、ミドルスクールでは好奇心とレジリエンス(立ち直る力)を示し、高校を中退することなく卒業する率が著しく高かったとされています。

さっきの研究でも言えることだけど、
親に対して「子供とのやり取りを増やそうね」と研究者が言っているうちに、その親の行動が安定したアタッチメントを形成したと言えるわね

絵本を読んだり、子どもとあそんだり、お話したりすることが大事だったんだね!

アタッチメントが形成されない環境の影響

アタッチメントが形成されない環境、つまり虐待や育児放棄(ネグレクト)のある状態では、子どもにどのような影響が出るのでしょうか。

結論、アタッチメントが形成されない環境で育った子供は
・健康上のリスクが高くなる
・非認知能力が正常に発達しづらくなる
・運動能力や体の大きさも成長しづらくなる
といった悪影響が出るとされているわ!

アタッチメントが将来の健康に及ぼす影響

ACE study(逆境的な子ども時代の体験)

子供のストレスやトラウマの長期的な影響に関する研究の一つにACE studyがあります。

この研究では約1万3000人を対象に子供時代の体験についてのアンケートを行い、アンケートの結果と成人後の健康状態との関連を調査しました。

アンケートの内容は「下の7カテゴリの逆境体験があるかないか」の調査でした。

①心理的虐待:「あなたの親または成人した家族が、あなたを罵る、非難する、嫌がらせを言うといったことが頻繁またはごく頻繁にありましたか」
②身体的虐待:「あなたの親または成人した家族が、あなたを押す、掴む、突き飛ばす、ひっぱたくといったことが頻繁またはごく頻繁にありましたか」
③性的虐待:「あなたよりも5歳以上年上の人または大人が、性的な仕方であなたに触れる、触るということがありましたか」
<家族の機能不全>
④物質中毒:「家族にアルコール/薬物中毒の人がいましたか」
⑤精神疾患:「家族にうつまたは精神疾患の人がいましたか」
⑥母親/義母への暴力:「あなたの母親または義母は、押す、掴む、ひっぱたく、物を投げつけるといった行為を時折、頻繁、またはごく頻繁に受けていましたか」
⑦家庭内での犯罪行動:「家族に刑務所に行った人がいましたか」

上の7つのカテゴリは更に1~4項目の質問がありますが、カテゴリ内の項目に対しひとつでも「はい」という回答があれば、そのカテゴリのスコアを「1」とし「1」となったカテゴリがいくつあるかをカウントし、ACEスコアとします。

7つ全ての質問が「いいえ」の人はACEスコアが0
逆に全て「はい」の人はACEスコアが7
スコアが7に近いほど、トラウマ体験が多かったということだね!

このACEスコアと健康診断の結果を調べたところ、スコアが高い人ほど健康上のリスクが高いことが明らかになりました。

例えば、逆境体験の数(ACEスコア)が「0」の人に対し、「4+(4以上)」の人は

  • 「オビシティ(肥満)」が1.6倍
  • 「喫煙」が2.2倍、
  • 「性感染症」が2.5倍、
  • 「50人以上の人との性交」が3.2倍、
  • 「薬物使用」が4.7倍、
  • 「自分はアルコール中毒だと思う」が7.4倍
  • 「薬物注射を使用」が10.3倍、
  • 「自殺未遂」が12.2倍


という結果になりました。

さらに糖尿病、脳卒中、がんなどの重い健康リスク要因の数もACEスコアとともに増加するという結果でした。

例えば、致死的なリスクを3つ以上もっている人は、ACE「0」の人が5%であるのに対し、「4+」の人は22%でした。

虐待などでトラウマ体験があると、健康状態がわるくなりやすいんだね。

アタッチメントが子どもの非認知能力に及ぼす影響

Building the Brain’s “Air Traffic Control” System: How Early Experiences Shape the Development of Executive Function

別の報告では、ACEスコアが高い場合、子どもの実行機能(遂行機能)の発達にマイナスの影響が出ているとされています。

(遂行機能がどんな機能かはこちらの記事で解説しています。)

また、ACEの質問項目にあるような明らかな虐待だけでなく、もう少し軽度の家庭問題も子供に悪影響を及ぼすことが報告されています。

The Science of Neglect: The Persistent Absence of Responsive Care Disrupts the Developing Brain.

子供の健康的な発達に最も深刻に影響するのはネグレクト(親からの反応の欠如)であるというエビデンスも数多く報告されており、肉体的な虐待よりも長期にわたって害を及ぼすという報告もあります。

ネグレクトを経験した子どもには以下のような影響がでるとされています。

  • 上手に友達を作れない傾向がある
  • 認知力や言語の発達が遅れる
  • 実行機能に問題を生じる
  • 集中することが苦手になる
  • 注意散漫で落ち着きがない

ここで書かれていることって認知能力や非認知能力が低下するということだよね、、、

こうした影響の原因については、「子供の脳が周囲の世界から決まったパターンを探しており、虐待やネグレクトなどによって、世界が不安定である場合、脳は何が起こってもいいように常に警戒することになり、常に交感神経優位になるから」であるとされています

アタッチメントが身体の成長に及ぼす影響

虐待やネグレクトが精神面だけでなく、身体面に及ぼす影響についても報告されているわ!

THE EFFECTS OF EARLY SOCIAL-EMOTIONAL AND RELATIONSHIP EXPERIENCE ON THE DEVELOPMENT OF YOUNG ORPHANAGE CHILDREN

この研究は戦後のロシアの孤児院の子どもが対象となりました。

子供達は十分な食料と衣服を与えられ、清潔なベッドで適切な医療やおもちゃも与えられました。

一方で孤児院はアタッチメントを形成するようなやり取りのない、厳しく人間味のないやり方で運営されていました。

そこに、アメリカとロシアの研究チームが施設のスタッフに心のこもった温かい接し方をするよう教育したところ、

その結果9か月後には認知能力や社会性の発達ばかりでなく、運動技能の改善が見られました。

そればかりか、食事や医療ケアは全く変わらないのに、身長体重胸囲の増加するなど、身体の発達も改善しました。

アタッチメントは精神面だけでなく、身体面にも影響を及ぼすんだね。

子どもは眠っていても親の口論にストレスを感じる

What Sleeping Babies Hear: An fMRI Study of Interparental Conflict and Infants’ Emotion Processing

この研究は両親の間に暴力を伴わない口論があった場合、乳幼児の発達にどう影響するのかを調査したものです。

生後6~12か月の乳児が対象となり、乳児が睡眠中に怒ったしゃべり声の口論の録音を流して脳の反応をfMRIで調査しました。

それと並行して乳児の母親を対象に家庭環境の調査をし、乳児の脳の反応と家庭環境との反応の関係を調査しました。

その結果、「家庭内で口論が頻繁に起きる」と答えた母親の子どもは、fMRIの画像上で感情ストレス反応自制に関わる脳の部位にはっきりとした反応が示されました。

前の論文のように虐待まで出なくても子供はストレスを感じているのね!
子どもは寝ている時でも大人の口論が聞こえているのね!

アタッチメントを築くために具体的にできること

アタッチメントが重要な理由は分かったけど、具体的に親はどうすればいいの?

ある特定の行動がアタッチメントを育むことは検証されているわ!

current trends in attachment theory : A review from life span developmental and clinical perspectives

親がとるべき行動をまとめると以下のようになります。

信頼性と一貫性: 子供に対して一貫性を持つことが重要です。約束を守り、予測可能な環境を提供し、子供が安全であることを確保します。このような一貫性と信頼性は、子供が親に頼ることができる安定感を提供します。逆に同じ行動をしても対応が違う時、子どもは混乱してしまいます。

同じことをしたときに昨日は怒られなかったのに今日は怒られたみたいなことだと、「いつ怒られるか分からない」と警戒モードになってしまうってことだね!

警戒モード、つまり交感神経優位が長期間続くことの悪影響は前述のとおりね!

感情的な応答: 子供が喜び、悲しみ、不安などの感情を表現したときに、親が適切な対応を示すことが大切です。このことは前述のAinsworthが「敏感性」という言葉で説明しています。

子どもが困ったサインを出した時に、すぐに察知したり
出来た喜びを表現した時に一緒に喜ぶってことだね!

身体的な親密さ: 身体的な親密さはアタッチメントを促進するために重要です。特に幼少期の子供は身体的な接触を通じて安心感を得ます。赤ちゃんを抱いたり、幼児と遊んだりすることが役立ちます。

共感と理解: 子供の視点を理解し、共感することが大切です。子供の話を聞き、彼らの視点を尊重し、感情やニーズに共感することで、子供は自分が受け入れられ、理解されていると感じます。

「そうなんだ、怖かったんだね」と感情に共感するということね!

遊びと共に過ごす時間: 子供と遊びながら過ごす時間は、アタッチメントを構築する素晴らしい方法です。共に遊び、笑顔を共有し、楽しい体験を作ることで、親子の絆が強化されます。

安全で予測可能な環境: 子供に対して安全で予測可能な環境を提供することがアタッチメントを促進します。ルーチンを維持し、子供にとってストレスのない環境を作りましょう。

言葉でのコミュニケーション: 言葉でのコミュニケーションを通じて、子供との関係を強化しましょう。話しかけ、質問し、子供の言葉を尊重します。

このように特定の行動がアタッチメントを育むことは研究により確かになっており、

具体的には子供と対面して遊んで、落ち着いた声で声掛けをして、微笑み、温もりのある触れ合いをすることが重要だと言われています。

まとめ

この記事ではアタッチメントの意味や概要、意義とそのエビデンス、そして親は具体的にどのような行動をとるべきかを解説しました。

子供と対面して遊んで、落ち着いた声で声掛けをして、微笑み、温もりのある触れ合いをする
これがいつでもできるわけじゃないから世の親は困ってるのよね

前述の論文でも「母親とのやり取りがアタッチメントを築く」など「母親」というワードは多く出てきており、「父親」というワードは出てきませんでした。

時代背景もあるのでしょうが、母親が家庭で育児をするという背景で研究がされています。

その場合、産後のホルモンバランスの崩れや産褥期の体の辛さ、睡眠不足によるイライラやうつ状態の母親が、泣き叫ぶ子供や昼寝もしてくれない子供の相手をする気になれますか?ということが問題になります。

つまり、アタッチメントの形成のために重要なことは「アタッチメントが重要であると知ること」に加えて「母親が子供と向き合えるだけの余裕を確保する」ことだと言えます。

そのために父親ができることは、日本においては男性の育休取得だと考えますが、そこには様々な障壁があるのも事実です。

男性の育休についてはこちらの記事で解説しています。

また、夫婦関係の悪化によって、親の余裕がなくなり、アタッチメントを育む行動がとれないということもあるでしょう。

それに関してはこちらの記事で解説しています。

そして今後子育てや親自身の老後資金などお金にまつわる悩みも親の余裕をすり減らします。

お金の悩みに関してはこちらの記事で解説しています。

以上、参考になれば幸いです。

また、子育て世帯の方向けに以下の記事も掲載しています。

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この記事を書いた人

子育て・投資・育休・節税について情報発信
学生結婚→社会人1年目で第一子誕生×妻育児休業
非課税投資の手続きの煩雑さに挫折しながらなんとか結婚三年で株式資産のみで650万円を突破、結婚4年で850万円を突破、現在5年目で1000万を目指しています。
そして、兄弟友人向けに投資初心者が未経験から非課金制度をフル活用するまでの最短ルート最適ルートをブログで解説。
1人でも多くの方の役にたつように、魂を込めて書いています。

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