非認知能力 用語集

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コンピテンス

心理学用語としてのコンピテンス(通常の仮名表記はコンピタンスcompetence)とは、「環境との効果的な関わり合いを持ち、有機体の維持・成長・繁栄をもたらす適合性・能力(White,R, 1956)」(出典:『心理学辞典』外林大作他編,誠信書房,1971)と定義されています。

有能感とも訳される。コンピテンスとは環境に対する適応能力をさす概
念。個人が、経験・学習を通して獲得した能力であり、ある状況下で有
効に作用すると考えられる潜在能力の側面と、その環境条件においてそ
の潜在能力を有効に活用し自分の有能さを発揮しようとする動機付けの
側面、という2つの側面を統合した概念である。

環境に対して自分の持っている能力がその環境条件で効果的に問題を解
決するだろうというように、自己能力の効果を予期する側面を持ってい
るため、R.W.ホワイトによれば、コンピテンスは、自己効力感の側面を
含みこむものであるとされている。

自己効力感とは、自分が行動およびその結果を自分の力でコントロール
できるであろうという予期=効力予期の程度を示す概念で、バンデュー
ラによって提唱された学習心理学における概念である。

アタッチメント

愛着(アタッチメント)とは、人や動物が、特定の対象に対して形成する、特別な情緒的結びつきのことを指します。

愛着に関する研究はさまざまありますが、ここではその中でも代表的なボウルビィ, J.の愛着理論を紹介します。

 
ボウルビィは、乳幼児が母親やそれに代わる養育者から母性的な養育を受けられなくなることをマターナル・デプリベーション(母性剥奪)と呼び、良好な母子相互作用を欠いた乳幼児は、その発達において種々の障害を生ずるとしました。
このマターナル・デプリベーションの研究から、ボウルビィは母子相互作用の重要性を説き、愛着形成の理論を構築したのです。

 
ボウルビィによると、母親や養育者への愛着形成は、次の4つの段階に分けられます。

まず最初に、生後3ヶ月頃まで、人に関心を示すものの人を区別した行動は見られない段階があります。
この時期には、周囲の人に対して無差別に微笑みかけたり、手を伸ばしたりといった行動が見られます。

次に、生後6ヶ月頃までの時期、母親とその他の人物を区別した反応が見られるようになります。
ただし、この段階ではまだ母親の不在に泣くというような行動はまだ見られません。

3つ目の段階は生後2~3歳ごろまでの時期で、明らかに愛着が形成され、接近や接触を求める行動が活発になる段階です。
人見知り不安を示し、母親がいなくなると探し求めるなどといった行動が見られるようになります。

最後に、2~3歳以降の時期、愛着対象との身体的接触を必ずしも必要としない段階があります。
この時期になると、愛着対象との身体的接近を必ずしも必要としなくなり、母親がいなくても情緒的な安定を保つことができるようになります。

 
以上のような段階は、愛着の発達が順調にいった場合ですが、マターナル・デプリベーションに見られるように、実際にはこうした健全な愛着の発達が阻害される場合もあり、愛着にはさまざまなパターンがあると考えられています。

ボウルビィの研究チームの一員であったエインズワース, M.D.S.は、こうした愛着の質を測定する方法として、ストレンジシチュエーション法を開発し、乳幼児の愛着の発達を類型化しました。
この方法では、愛着のパターンを「安定型」「回避型」「葛藤型」の3つのパターンに分けましたが、こうした愛着のパターンは、乳幼児期を過ぎても、個々の人格形成に持続的に影響を与えるもの考えられています。

レジリエンス

レジリエンスとは、弾力性、回復力、耐久性、元の状態に戻る力や性質といった意味を持つ言葉です。
これは脆弱性の反対の概念であり、脆弱性とは、感情的苦痛に対する感受性の強さを意味し、病気へのかかりやすさや不適応に陥りやすい程度を表します。

レジリエンスは、元々はストレスと同じく物理学の用語でしたが、困難な状況を経験して傷ついても立ち直る力強さという意味で、心理学でも使われるようになりました。

大きな事故や災害などの外傷的な出来事を経験した人には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が生じたり、診断に至るほどではなかったとしても、慢性的な抑うつなどが生じたりする場合もあります。
しかし、必ずしも全員がそういった不適応状態に陥るわけではありません。
無理に明るく振る舞っているということでもなく、困難な経験を糧にして力強く過ごしていく人たちもいるのです。

そうした逆境に負けない人たちに共通する特性を表す概念として、レジリエンスが注目されています。

私たちの日常を脅かすような要因は危険因子と呼ばれ、危機や困難から回復するためのレジリエンスを高める要因は保護因子と呼ばれます。
保護因子には、パーソナリティなどの個人要因や、サポートしてくれる人などの環境要因が含まれます。

また、レジリエンスは、身体的健康、楽観性、社交性といった資質的レジリエンス要因と、問題解決志向、自己理解、他者心理の理解といった獲得的レジリエンス要因に分類でき、後者は後天的に身につけやすい特性であると言われています。

 
レジリエンスの類似概念に、ハーディネスやストレス耐性があり、これらはレジリエンスを高める要因の1つと考えられています。

ハーディネスは、困難な状況でも傷つかない頑健性や、困難に対して前向きに挑戦し、課題の統制を試みる力強さを示す概念です。
そして、ストレス耐性は、人が危険因子などのストレッサーに曝されたときに、その性質や程度を的確に認知し、負荷に耐えながら対処できる力を表す概念です。

この2つはどちらかというと逆境に負けない、動じないといった側面に注目した概念とも言えますが、それに対してレジリエンスは、傷ついたり不適応的な状態に陥ったりしても、そこから立ち直るしなやかな力という側面に注目した概念です。

遂行機能(実行機能)

executive function

遂行(実行)機能とは、「将来の目標達成のために適切な構えを維持する能力」と定義され、具体的には1)目標設定、2)計画立案、3)計画実行、4)効果的遂行などの要素から成り立っています。 私たちは何かを実行するときに、この4つの要素を無意識又は意識をしながら行っています。

実行機能には、抑制(inhibition)、更新(updating)、シフト(shifting)の三つの働きがあるとされていますが(Miyake et al., 2000)、その中で、更新の働きがワーキングメモリーであるとされています。

グリット

グリット(GRIT)とは、やり抜く力、粘り力のことで、ペンシルバニア大学心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏(以下、ダックワース氏)が定義したスキルです。

困難に直面しても、自分の情熱やエネルギーを持って目的を遂しとげる力のことを意味します。

脳科学者である茂木健一郎氏は、著書「続ける脳 最新科学でわかった!必ず結果を出す方法」において、グリット(GRIT)を「困難があっても、続ける力」「情熱を持って取りくも粘り強さ」と表現しています。

グリット(GRIT)は、「度胸(Guts)」「回復力(Resilience)」「主体性(Initiative)」「執念(Tenacity)」のイニシャルと、気概や闘志をあらわす「GRIT」をかけた言葉で、これら4つの能力を鍛えることで、粘り強く困難に立ち向かい、目的を遂行(GRIT)することができます。成功者は共通して、このグリット(GRIT)を持つ傾向にあると言われています。

レジリエンスとグリット(GRIT)の違い

グリット(GRIT)は「やり抜く力」を意味するのに対し、レジリエンスは直訳すると「回復力」「弾力」となり、困難や逆境が訪れても挫折することなく立ち直ることもできる「しなやかな強さ」を意味します。グリット(GRIT)の意志を貫く強さと、レジリエンスの柔軟性は、それぞれ両極にあるようにみえます。前述したように「ただ意地っ張りに貫く」のではなく、謙虚に周りのアドバイスに耳を傾け、自制心を保つことが重要で、グリット(GRIT)を達成する過程にレジリエンスが必要であることが分かります。

グリット(GRIT)に大切な8つの要素

8つの要素が全て揃ってはじめて良いグリット(GRIT)となります。どれが欠けても良いグリット(GRIT)にはなりえません。

  • 情熱
  • 幸福感
  • 目標設定
  • 自制心
  • リスク・テイキング
  • 謙虚さ
  • 粘り強さ
  • 忍耐

良いグリットと悪いグリット

グリット(GRIT)にも、良いグリットと悪いグリットが存在します。悪いグリットは、情熱、幸福感、目標設定、自制心、リスク・テイキング、謙虚さ、粘り強さ、忍耐の8つのどれか一つの要素が欠けており、そのために嫉妬心や慢心などを持った、いわゆる「偽りの成功」へと突き進んでしまいます。

キャロライン・アダムス・ミラー著、「実践版 GRIT(グリット) やり抜く力を手に入れる」によれば、悪いグリットには、「虚栄グリット」「強情グリット」「セルフィーグリット」の3つに分類されます。

虚栄グリット

周囲からの称賛や名誉を得るため、自分を偽り、他人を欺くことにグリットするタイプ。謙虚さ、自世親、粘り強さが欠けており、悪化すると犯罪行為に手を染めることもあります。

強情グリット

目的を達成したいがあまり、日々の努力を怠り、お金や自分の強靭な精神力を武器に、強情なまでに目的をやり遂げようとするグリット。目的の裏にある名声や称賛を手に入れることが目的になってしまっていて、正しい選択ができなくなります。

セルフィーグリット

困難な目的を達成するまでの道のりをより過酷、苛烈に演出し、執拗に目的の遂行にこだわること。ナルシシズムという言葉に置き換えると非常に分かりやすいです。虚栄グリットと異なるのは、実際に目的をやり遂げてしまう点です。

「やり抜く」強い意志を持っていた情熱的な起業家が、いつの間にか周囲のアドバイスに耳を傾けずに「暴走する」ことが時々起こるように、謙虚さを失うことで、自制がきかなくなり、失敗への罠にはまるのです。

情熱を注ぎ、気合いで乗り切るのは、決して良いグリット(GRIT)ではありません。あくまで良いグリットは、自分の行動が周りの人から賞賛され、そして自分以外の人のモチベーションも高める、好影響を与えることができます。

グリット(GRIT)はどのように測定する?

グリット(GRIT)の第一人者、ダックワース氏が米国陸軍士官学校(ウェストポイント)向けに開発した「グリットスケール」によって測定できます。以下の10個の質問を5段階評価で回答した数値を合算し、10で割った数字が「グリットスコア」となります。グリットスコアは5段階評価で表され、5が最高値で1が最低値となります。また、低い数値が出たとしても、これはあくまで現在の状態を表したもので、グリット(GRIT)を高める行動を重ねれば、数値は改善されます。

自己効力感

自己効力感は、カナダの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱されました。自己効力感とは、人が行動や成果を求められる状況下において、「自分は必要な行動をとって、結果を出せる」と考えられる力を言います。したがって、「自分は達成できる」「自分には能力がある」という確信があれば「自己効力感が高い」状態にあり、「自分には無理だ」「自分には能力がない」と考えていれば「自己効力感が低い」状態であると言えます。

またバンデューラ氏は、社会的学習理論(他者の影響を受けて、社会的習慣や態度、価値観、行動を習得していく学習)を研究する中で、人が行動に移すかを決定づける動機には2種類あると考えました。その一つが「結果期待」で、特定の行動をすれば期待する結果が得られると考えることによる動機づけです。もう一つが「効果期待」で、望む結果に必要な行動を自分なら遂行できると考えることによる動機づけです。これら2つの期待を持てるかどうかが、自己効力感に関係があるということなのです。

自己効力感は3つのタイプに分類することができます。

自己統制的自己効力感

これは自分の行動に関する自己効力感を意味します。何か困難な課題を解決しなければならない時や、新たなチャレンジをする時に、「自分ならうまくできそう」と思える感覚です。このタイプの自己効力感があれば、計画通りに進まなかったり失敗したりしても、すぐに立ち直って成功に向けて試行錯誤を重ねることができます。

社会的自己効力感

これは対人関係における自己効力感を意味します。気難しい人や初対面の人を目の前にした時に、「この人と仲良くなれそう」と思える感覚です。このタイプの自己効力感があれば、ビジネスにおいても上司や同僚、お客様と積極的にコミュニケーションを取りに行くことができ、早期の段階で関係性構築が進みます。

学業的自己効力感

これは学習に関する自己効力感を意味します。初めて学習する内容や難しいと感じる説明を聞いた時に、「自分なら理解できそう」と思える感覚です。このタイプの自己効力感があれば、初めて勉強することにも真剣に向き合い努力することができたり、わからないことは積極的に質問して理解しようとしたりします。

メタ認知

メタ認知とは、自分が対象を認知している状態を認知しようとすることです。

ここでいう認知とは、思考、知覚、行為などを指します。

現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化して認識することにより、自分自身の認知行動を把握する能力をメタ認知能力と言います。
このメタ認知能力は、自分の認知行動を正しく知る上で必要な心理的能力です。

また、自己の記憶や記憶過程に対する客観的な認知をメタ記憶と言い、これもメタ認知の重要な要素のひとつとされています。

メタ認知は、問題解決や課題達成を自分自身の力で行うために必要な、計画立案や方略の設定、セルフコントロールやセルフモニタリングに不可欠な要素です。

現在では、多くの教育現場において、メタ認知能力の育成が重要な課題の1つとされています。

私たちは,朝起きてから寝るまで,何かを見たり聞いたり覚えたり理解したり考えたりしています。このように頭を働かせることを「認知」と呼びますが,この認知は,常に正しく行われているとは限りません。見まちがいや聞きまちがいはよくあることですし,記憶や理解,思考(判断)がまちがっていることもあるわけです。こうした認知の誤りを見直し正すのは,認知よりも一段高いレベルの「メタ認知」と呼ばれるものです。

メタ認知を働かせることを「メタ認知的活動」と呼びます。たとえば,「どうも記憶があやふやだ」という気づきや「この問題なら簡単に解けそうだ」という予想,「この考え方でいいのか」という点検,「完璧に理解できた」という評価などは,メタ認知的なモニタリング(自分の認知を監視すること)です。これに対して,「わかりやすいプレゼンを組み立てよう」と目標・計画を立てたり,「論理が一貫していないから組み立てを変えよう」と修正に向かうのは,メタ認知的なコントロールです。メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールは,図1のように循環的に働きます。

内発的動機付け

動機付けとはいわゆるモチベーションをことです。

内発的動機付けとは、モチベーションの源が内発的、つまり自分の内側からでるものということです。

反対に外発的動機付けとは、報酬などの外部からの要素がモチベーションの源である場合をいいます。

説明
内発的動機づけ内面の興味や関心・プロセスそのものがモチベーションとなっている状態
活動の結果として得られる報酬のための行動ではなく、活動そのものが報酬になっている状態
一銭の得にもならない趣味の活動
外発的動機づけ報酬を得ることや罰則を避けることなどの外的な目的のために、手段として行動をとっている状態学びそのもののためではなく、試験に合格するための勉強

内発的動機づけは外発的動機づけに対して、持続性があり、創造性や責任感という点でも外発的動機づけより優れているとされています。

一方外発的動機づけは即時性は高い(短期間で行動が変わる)が、外的報酬に対して目標とした水準以上の結果は得られにくく、報酬に慣れてくると持続性が弱まり、より高い報酬を欲するようになるとされています。

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この記事を書いた人

子育て・投資・育休・節税について情報発信
学生結婚→社会人1年目で第一子誕生×妻育児休業
非課税投資の手続きの煩雑さに挫折しながらなんとか結婚三年で株式資産のみで650万円を突破、結婚4年で850万円を突破、現在5年目で1000万を目指しています。
そして、兄弟友人向けに投資初心者が未経験から非課金制度をフル活用するまでの最短ルート最適ルートをブログで解説。
1人でも多くの方の役にたつように、魂を込めて書いています。

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