・これから育休を取得しようと考えている男性
・育休の取得を希望して、パタハラなどの何らかの障壁を感じている方
・男性が育休を取得するにあたり、具体的にどんな準備をして臨めばよいのか知りたい
以前の記事では、子どもの非認知能力に親の接し方が重要であることについて解説しました。
「子供と対面して遊んで、落ち着いた声で声掛けをして、微笑み、温もりのある触れ合いをする」ことが重要なのは分かるんだけど、
これがいつでもできるわけじゃないから世の親は困ってるのよね
重要なことは「アタッチメントが重要であると知ること」に加えて「母親が子供と向き合えるだけの余裕を確保する」ことだと言えます。
そのために父親ができることは、日本においては男性の育休取得だと考えますが、そこには様々な障壁があるのも事実です。
今回は男性の育休について、職場で初めて育休6ヶ月を取得した私の体験談も踏まえて解説します。
【育休取得する男性必見】育休取得のためのやっておくべきこと7選
私が育休を取得する際にやっておいてよかった準備は以下の通りです。
- 育休制度(お金・期間・男女の違い)の理解
- 育児休業給付金の金額の理解
- 育休中の社会保険料の理解
- 育休を取得する理由の明確化
- 育休による会社側のメリットの理解
- パタハラの判例の理解
- パタハラの定義の理解
- 録音アプリの用意
そこまでする必要あるの?と思ったけど
色々ややこしいことになったものね。
やっておいてよかった育休準備①育休制度の理解
制度の理解をしておく理由は男性の育休取得率は2021年時点で約14%となっており、会社や上司も男性の育休について理解していないケースがあるからです。
理解していない者同士が話をすると
話が進まないどころか思わぬトラブルになったりすることも
あるものね。
産休と育休の違い
子供の出産に関わる休業制度には産前産後休業と育児休業がありますが、男性に関係あるのは育児休業です。
男性の育休の取得率は2021年の時点で約14%ですから、職場も男性の育休取得に慣れていない場合がほとんどです。
取得する側が主動で話を進めるためにもまずは制度のことをしっかりと理解する必要があります。
また、育児休業は原則子どもの1歳の誕生日の前日までですが、条件を満たせば延長も可能です。
延長についてはこちらの記事で解説しています。
男性の育休と女性の育休の違い
男性と女性の育休の違いは開始日の違いです!
育休取得を考える男性が、男女の育休の違いを理解する理由は
男性の場合職場からいなくなる日が定まらないからです。
上の「産休と育休の違い」の表でも説明した通り、育休は男女ともに取得可能な制度です。
一方で男女で違う部分もあり、それが取得可能な期間です。
女性の場合、育児休業期間は産後休業が終わった出産56日後から子供が1歳になる日の前日までです。
男性の場合は出産日予定日、または出産予定日の早い方から子供が1歳になる日の前日までです。
子供の誕生日の前日って謎ね。
1日伸ばして誕生日をお祝いしてから復帰させてほしいわ
もう一つ謎を言うと
育児休業期間は誕生日の前日までなんだけど
育休給付金の給付期間は誕生日の前々日までなんだよ
謎だよね
育休取得を考える男性が、なぜ男女の育休の違いを理解する必要があるのか?というと、職場からいなくなる日が男性の場合定まらないからです。
女性の場合は予定日から8週前から産休に入るため、仕事を中断する日が最初から分かっていますが、男性の場合は育休の開始が出産日or出産予定日の早い方であり、「この日から休みに入ります」という日が決まっていないのです。
予定日を育休開始日と思って引継ぎの準備をしていたら
予定日2週間前に産まれて
「あ~引継ぎの準備が終わっていない‼」
なんてことにならないように注意が必要ね!
職場の上司も、女性の育休には慣れているかもしれないけど、
男性の育休には慣れていない可能性が高いからこの点は注意が必要だね!
また、職場によっては、育休は「予定日から」と完全に決められてしまうこともあるようです。
その場合予定日よりも出産日が早まった場合、「子どもは生まれたのに退院日には育休にまだ入れていない」という事態にもなりかねません。
育休開始日は出産予定日からと決められてしまう職場の場合は、出産日が予定日よりも早まった場合の対応方法も事前にすり合わせをしておく必要があります。
私がこのパターンでしたが、「出産日が早まった場合は育休開始までの日数を有給休暇で埋めて良い」と事前に話を付けておいたので助かりました!
育休と産後パパ育休の違い(現行)
結論、育休と産後パパ育休には
現行の制度では大した違いはありませんが、
・短期間の育休の取得を考えている
・育休の取得を巡って職場ともめた場合の折衷案に使いやすい
という点で知っておくべき制度です。
2022年10月から新たに始まった制度が産後パパ育休です。
男性の育休の期間は「出産日予定日、または出産予定日の早い方から子供が1歳になる日の前日まで」ですが、そのうち出産日から56日以内の期間を「産後パパ育休」と呼びます。
ちょうど女性の産後休業と期間と同じね!
だから「男性の産休」なんて呼ばれ方もしてるわね!
男性は産後パパ育休の期間56日のうち、半分の28日を最大2回まで分割してとることが出来ます。
なぜこんなにややこしい制度ができたの?
これになんのメリットがあるの?
一言で言えば男性が育休を取りやすくするためだね!
申出期限と期間中の就労可否に違いがあるんだよ!
産後パパ育休 | 育休 | |
申出期限 | 2週間前 | 1か月前 |
休業期間中の就労 | 可能※ | 原則不可 |
(※労働者から事業主に条件を申し出て、事業主は労働者が申し出た条件の範囲内で就業候補日・時間を提示し、双方の合意が必要。ただし、就業可能日等は「休業期間中の所定労働時間の半分」「休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満」の2つの条件を満たす場合に限る。)
申出期限が2週間前まで可能になったことで
里帰り出産で退院後は実家の世話になろうと思ってたけど、
両親が病気で実家に帰れなくなったから育休取ってー!!
というようなことが予定日3週間前に起こった場合でも、従来の育休では期限の1か月を過ぎていたので申請できませんでしたが、産後パパ育休ができたことで対応できるようになりました。
また、期間中の就労が可能になったことで
会社の上司に、「育休中のこの期間だけはどうしても仕事してくれないと困るよー。この日だけ来てくれたらあとは休んでくれていいからさー」って言われちゃったよー、、、
というようなことが起こった場合でも、従来の育休では上司の頼みを断るか、育休開始日を遅らせるかで対応するしかなかったですが、産後パパ育休ができたことで対応できるようになりました。
色んなケースに対応できるようになった点が産後パパ育休のメリットというわけね!
育休と産後パパ育休の違い(現行)
現行の制度では大した違いはありませんでしたが、今後の改正で大きな違いが生まれる予定です。
2023年3月17日の記者会見で岸田首相は子ども政策についての会見を開き、育児制度を充実させるための方針を発表しました。
育児休業給付金を現行の賃金67%から最大80%へ引き上げる案を実施し、給付金には社会保険料がかからないことから、実質育休前と同額の賃金を受け取れるようにする方針です。
男性の育児休暇取得を促進する「産後パパ育休」で一時的に給付金を80%へ引き上げる予定で、女性も同様に手取り10割の給付金を受け取れるよう、給付率の引き上げが検討されています。
なお、給付金引き上げの実施時期については明らかにされていません(2023年9月15日現在)。
給付金引き上げの時期が発表され次第
X(旧Twitter)でお知らせするので是非フォローしてください!
育休とパパママ育休プラスの違い
この制度はママの復職時のサポートのために知っておくべき制度です。
パパが育休を取得する時から考えると1年先の話になりますが、
後々職場ともめないように、あらかじめママと話し合っておきましょう!
パパ・ママ育休プラスは、夫婦両方が育休を取得していた場合のみ、夫婦のうち「後に育休を取得した方」が育休を延長できる制度で、具体的には子どもが1歳2カ月になるまで延長できます。
育休は原則1歳までだったのが、2か月伸びるってことね!
これはどんなメリットがあるの?
1年間の育休を終えたママが職場復帰する際には、
- 職場に慣れないといけない
- でも子供は保育園に預けてるから迎えに行かないといけない
- パパも仕事で帰りが遅いから家事もしないといけない
など職場復帰を困難にする要素が数多くあります。
その期間をサポートする目的で、2か月間の延長を可能にしたのがこの制度になります。
育休を取得できる人
育休取得の条件は以下の通りですが、
重要なことは「育休も申出は原則会社は断れない」という点です。
但し、①雇用期間が1年以上については、注意が必要です。
原理原則としては、期間の定めのない雇用契約(無期雇用)の労働者から育休取得の申し出があった場合は、会社は原則として拒むことはできないため、入社から1年未満であっても育休を取得できます。
ただし、入社1年未満の労働者を育休の対象から除外する内容の労使協定が締結されている場合は、会社は育休の取得を拒むことができます(育児介護休業法第6条1項)。
会社の就業規則などの確認が必要ね!
まぁ、ほとんどの会社が1年未満の人を除外する労使協定を結んでると思うんだけどね、、、
「育休の申し出は原則会社は拒否できない」というのが前提ですが、権利だからと言って横柄な態度をとると育休から戻った時に会社の居心地が悪くなってしまうかもしれません。
もちろん、育休を理由に不当な扱いをするのは違法なのですが、とはいえ円満に育休を取得し円満に職場に戻れるに越したことはないため、前提を理解しつつ波風が立たないように話を進めましょう。
やっておいてよかった育休準備②育児休業手当の金額の理解
育休を取得しない理由として、収入が下がるからという意見もありますが、実は戦略次第では育休中も大きく手取りは下がりません。
結論だけ言えば、育休中と働いている時の収入にはそこまで大きな差はありません。
その理由は税金や社会保険料の免除があるからです。
産休育休中のお金の戦略はこちらの記事で詳細解説しています。
お金が理由で育休取得を諦めている方は、意外とあきらめる必要もないかもしれないため是非ご一読ください。
やっておいてよかった育休準備③育休を取得する理由の明確化
やっておいてよかった準備の3つ目は理由の明確化です。
前述の通り、育休の申し出は会社や上司は原則拒否できないため、理由も何も「取得希望です」だけでいいのですが
上司にも同僚にも「なんで育休とるの?」と理由を聞かれることが本当に多かったです。
「育児のためです」の一言でいいのですが、やはり後々戻る職場ですから非常に気を遣った結果、毎度理由を答えることになりました。
私の場合は
- 第1子の保育園全落ち(6個)を妻の育休延長で現在対応中であるため
- 第1子出産後妻の体調不良があり、第2子出産後も体調不良が予想されるため
- かつ、第一子もいるため、体調不良が出た場合第一子の面倒を見られなくなるため
- 両親フルタイム就労で両親の援助は期待しづらいため
と答え、それ以降特に何も言われることはありませんでした。
曖昧な取得理由や、整理できていない理由を述べることで「こいつ育休とって遊ぶ気なんじゃ」など不要な疑いをかけられないためにも、聞かれてすぐ答えられる準備はしておいてよかったと思います。
まぁ本来は理由なんて聞かれず
育児をするのが当たり前(育休をとるのが当たり前)
という雰囲気であるのが望ましいんですけどね。
やっておいてよかった育休準備④育休による会社側のメリットの理解
やっておいてよかったと思う準備4つ目は会社側のメリットの理解です。
本来育休をとるのに相手(上司・会社)を説得する必要性はないのですが、仮に説得する必要性が出てしまった場合、自分の都合ばかり言っても相手は聞いてくれないことが多いです。
相手にとってもメリットがあるということを伝えることで、説得の材料になると思い私は準備をしておきました。
従業員が育休を取得するメリットは以下の4つです。
- 育休中は社会保険料は免除になるが、普段折版している会社負担分も免除になる
- 休業中は給与を払わなくてよいため人件費削減につながる(育児休業給付金は雇用保険からでるため給与ではない)
- 育休取得による国からの助成金制度あり(両立支援等助成金育児休業等支援コース)
- 男性の育休取得の発信による会社イメージアップ
上の二つは従業員が支出が減りますよというメリットです。
3つ目は従業員が育休を取得することで、企業側に国から助成金が出る制度があります。支出が減るだけでなく助成金による収入もあがるため、これも企業にとってのメリットになります。
4つ目に関しては、従業員が1,000人を超える企業においては、育休取得状況を公表することも義務化されています。(2022年4月の育児・介護休業法の改正)
公表することで、「この会社は男性が育休を取得できる環境を整えている会社なんだ」という認識が世間的に広がり、優秀な人材の流入につながる可能性もあります。
国が男性の育休取得を推進する理由となった背景はこちらの記事で解説しています。
私は結果的にこれらの話をしなくても済みましたが、
仮に説得の必要性が出たとしても大丈夫という心の余裕があったため
準備しておいてよかったなと思っています!
やっておいてよかった育休準備⑤パタハラの判例参照
パタハラとはパタニティハラスメントの略で、パタニティ(paternity)とは父性、ハラスメント(harassment)は嫌がらせという意味です。
つまり、男性が育児時短や育休を請求したり取得したりすることで不利益な扱いや、嫌がらせを受ける行為、言動をさします。
パタハラの判例としては
- 医療法人稲門会事件(違法判決)
- アシックスパタハラ訴訟(和解)
- 三菱モルガンパタハラ訴訟(合法判決)
- カネカパタハラ告発(告発のみ)
などがあります。
それぞれの事例を一言でいうと
- 稲門会事件→育休取得を理由に育休から復帰した後、昇給させなかったから違法
- アシックス→育休後のこれまでしたことのない業務に配置転換されたことは違法ではない
- 三菱モルガン→育休復帰後、育休前は呼ばれていた会議に呼ばれなくなったのは違法ではない
- カネカ→育休復帰後急に転勤を命じられたのは違法ではない
という内容です。
詳細はそれぞれの事件を見てもらうとして、これらを知っておいた方がいいと私が思う理由は、明日は我が身かもしれないからです。
カネカの告発で弁護士の方が述べているように、パタハラ事案はパタハラを受けたと主張する側が子育てに追われ訴訟で戦えず、短期間で決着がつくことが多いとのことです。
つまり、育休の取得によって、もしかしたら不当な扱いを受けるかもしれないですが、不当な扱いを受けてから、この扱いは不当なのか、不当であったとしても証拠は集められるのかなど考えていては対応できず、泣き寝入りせざるを得ない可能性があるということです。
さっきの事例を見るに、昇給させないなどのあからさまな事案は違法になるけど、配置転換や会議に参加させないなどは、育休が理由と立証しづらいため、違法にはなりにくいって感じね
やっておいてよかった育休準備⑥パタハラの定義の理解
判例をみたことで、どこまでがハラスメントとして違法になるのか何となく理解できましたが、明確な定義はわかりませんでした。
判例から分かったことは、完全な黒は黒だが、
グレーゾーンは立証が難しいということでした。
そこで、完全な黒とはどういうことを指すのかということだけでも知識として知っておこうと準備しました。
パタハラの代表的な例は、次のとおりです。
パタハラの例①不利益な取扱いをほのめかす行為
✅ 「育児休業を取得したい」という相談を受けた際、「休むなら辞めてもらうしかない」などと言う
✅ 時間外労働の免除を希望した部下に対して、「昇進はなくなるぞ」などと言う
パタハラの例②「制度の利用を希望すること・利用すること」を妨害する行為
✅ 「育児休業を取得したい」という相談を受けた際、「休まれると困るから」などと言い取得を認めない
✅ 「育児休業を取得する」と聞いた後、「仕事が大変になるから育児休業は取得しないでほしい」などと迫る
✅ 「うちの部署は忙しいから、育児休業は利用しないように」などと日頃から発言している
パタハラの例③制度を利用したことを理由に、嫌がらせをする行為
✅ 制度を利用した人に対して、嫌がらせの発言(例:「自分だけ育児休業を利用して休むなんて、周りの迷惑を考えていないよな」)を繰り返す
✅ 育児休業等の制度を利用したことを理由に、本人の意思に沿わない配置転換を命ずる
✅ 「育休をとる人には責任のある仕事を任せられない」などと言い、簡単な業務しか担当させない
ただし、これらの行為をされたとしても立証できなければ泣き寝入りすることになりかねません。
そこで用意したのが録音アプリです。
やっておいてよかった育休準備⑦録音アプリの用意
録音アプリを用意しておいてよかったと思う理由は以下の通りです。
- 万が一ハラスメントがあった場合の保険になる
- 保険があるため心に余裕が生まれ感情的にならずに話し合える
- 結果録音を使わずに済む
ちなみにスリープ状態でも録音可能でバレにくいという理由でディクタフォンを使いました。
その際に録音アプリの比較をしましたが、詳細はこちらの記事で解説しています。
まとめ
この記事では男性の育休について、職場で初めて育休6ヶ月を取得した私の体験談も踏まえて解説しました。
男性の育休は法整備などもされ、取得が推進され始めていますが、一方で現場レベルでは理解が得られない部分もあると個人的には感じました。
この記事が不要なほど、すんなり育休がとれることが理想ですが、そうでない方の助けに少しでもなれば幸いです。
また、子育て世帯の方向けに以下の記事も掲載しています。
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